そもそも、メルアド企画の存在が公知のものとなったきっかけは、昨年 7 月に大量送信された「小泉内閣支持・不支持アンケート」である。
ASP を使用し、引数に ID 番号を指定した URL をクリックするシステムがメルアド企画のものと酷似していることなどから、このメールは (後の) メルアド企画からの送信とみなされてきた。しかし、奥田氏は「自分が送信したものではない」と否定しているという。
そこで今回は、これまであまり深く追求されてこなかった「小泉内閣アンケート」の送信元について分析してみよう。
以前の記事でも指摘したように、「小泉内閣アンケート」の送信元リモートホストは「211.9.37.210」というグローバル IP アドレスを持っていた。この IP アドレスの割当先は、JPNIC WhoIs によると、以下のようになっている。
ビットドライブ (bit-drive) SUBA-330-002 [サブアロケーション] 211.9.37.0 有限会社ピーエスネットワーク (PS-NETWORK Corporation) PS-NETWORK [211.9.37.208 <-> 211.9.37.223] 211.9.37.208/28この情報は、すでに公知のものだ。そして、奥田氏が運営している「日本生体電気・鶯谷研究室」の Web サーバ「www.dnl.jp」が「211.9.37.209」という IP アドレスを持ち、同じネットワークに属していることも確認されている。
問題の「ピーエスネットワーク」という会社は東京の千代田区にあり、ネットワークの構築や、オンライン・ショップなどの Web サイト構築、IT 関連の教育などを請け負う会社らしい。設立は 1998 年で、Web サイトの内容を見る限り、この会社自体はまっとうな会社のようだ。
注意
「ピーエスネットワーク」という会社は岐阜県中津川市にもあるが、こちらは本件とは無関係と考えられる。
当初、「http://melad.jp/」が bit-drive の回線を用いてインターネットに接続されていたことから、「http://www.dnl.jp/」も同様のパターンで運用されていると推測された。つまり、件のアドレス・ブロックがピーエスネットワークの手で奥田氏に割り当てられ、自宅サーバを設置していたと推測されたわけだ。
そのため、「211.9.37.210」と「www.dnl.jp」はいずれも奥田氏の管理下にあるサーバであると推測された。しかし、念のために現在の「211.9.37.210」を調べてみたところ、この推測が間違っていたことが判明した。
実際に「http://211.9.37.210/」にアクセスしてみると分かるが、中古機械の販売会社のようだ。所在地や業務内容から見て、「日本生体電気・鶯谷研究室」とは無関係のようである。
こうなると、このアドレス・ブロックが、(有) ピーエスネットワークを介して奥田氏個人にアサインされているという可能性は低くなる。
そこで、ネットワーク・アドレスの「211.9.37.208」とブロードキャスト・アドレスの「211.9.37.223」を除くアドレス・ブロック全体について、ブラウザで接続してみた結果が以下のものだ。(2002.5.29 現在)
なお「(404)」とは、ping はできるが 404 エラーになったもの、「(Not in use)」とは ping に反応がなかったものである。
IP アドレス 利用状況 備考 211.9.37.209 日本生体電気・鶯谷研究室 http://www.dnl.jp/ 211.9.37.210 SANTAI TRADING 中古機械販売業らしい 211.9.37.211 www.ec-shock.com 211.9.37.212 (Apache + Red Hat Linux Test Page) サーバは立てたが使われていない ? 211.9.37.213 PS-NETWORK開発グループ 211.9.37.214 (404) 211.9.37.215 KIRARA Internet Online Shop http://www.kirara-shop.net/ 211.9.37.216 (404) 211.9.37.217 マップカメラ http://www.mapcamera.com/
(http://www.mapcamera.co.jp に移転中)211.9.37.218 (Not in use) 211.9.37.219 (Not in use) 211.9.37.220 (404) 211.9.37.221 (404) 211.9.37.222 (ルータ) このように、アドレス・ブロック中にメルアド企画や奥田氏とは関係のなさそうなサイトがいくつも含まれていることと、ピーエスネットワーク自身が NT ベースのコンテンツ開発や Web アプリケーション開発を商売にしていることを考えると、これらのサーバはピーエスネットワークが運用し、中身を貸し出しているものと推測するのが妥当だろう。
従って、「日本生体電気・鶯谷研究室」の Web サーバは、研究室を兼ねている奥田氏の自宅ではなく、ピーエスネットワークに置かれている可能性が高そうだ。
なお、ピーエスネットワークのオフィスは秋葉原電気街北西端付近にあり、メルアド企画の事務所や奥田氏の自宅からも、それほど遠くない。この地理的関係から考えると、両者の間に直接的な行き来がある可能性は低くなさそうだ。
次に、「小泉内閣アンケート」のメールで差出人のメールアドレスに使用されたドメイン「ec-shock.com」について調べてみよう。
このドメインを WhoIs データベースで調べた結果が、以下のものだ。Registrant: PS-NETWORK Corporation (EC-SHOCK-DOM) Soto-Kanda,3-6-1-3F chiyoda-ku, Tokyo 101-0021 JP Domain Name: EC-SHOCK.COM Administrative Contact: Katayama, Hiroshi (HK****) ********@PSNETWORK.CO.JP PS Network ********** Chiyoda-ku,Tokyo, 101-0031 JP 3-3***-**** (FAX) 3-3***-**** Technical Contact: INFOJAM NETWORK (IN305-ORG) hostmaster@INFOJAM.NET 9F Oyama Bldg., 3-23-15 Jinbo-Chou Kanda, Chiyoda-Ku, Tokyo 101-0051 JP 03-3262-4676 Fax- 03-5776-3336 Record expires on 22-Aug-2002. Record created on 22-Aug-2000. Database last updated on 27-May-2002 21:51:37 EDT. Domain servers in listed order: DNS3.EC-SHOCK.COM 211.9.37.211 NS1.BIT-DRIVE.NE.JP 211.9.32.227つまり、「ec-shock.com」はピーエスネットワークが保有するドメインということになる。「www.ec-shock.com」を nslookup で調べると、先の表にも示したように「211.9.37.211」が返されるが、このアドレスはピーエスネットワークに割り当てられたアドレス・ブロック中に含まれているから、特に不自然さはない。
「ec-shock.com」は、サイトの内容によると、オンラインショップなどを運用するためのサーバを貸し出すために用いられているらしい。つまり、自前でサーバを構築するのが困難な顧客に対し、ショップ構築用のシステムをまるごと貸し出すというわけだ。そのため、このドメインには複数のユーザー・アカウントが存在するようだ。
となると、「小泉内閣アンケート」の差出人「sorifu_info@ec-shock.com」についても、送信者はピーエスネットワークに依頼して「sorifu-info」というアカウントを取得した上で送信された可能性がある。このため、ピーエスネットワークの顧客である可能性が高いと推測されている奥田氏の関与が疑われる一因となる。
なお、この差出人名「sorifu_info@ec-shock.com」に疑念を感じて政府にチクった人がいたらしく、後で政府筋からクレームがついたとする未確認情報もある。「211.9.37.210」の用途が昨年 7 月と現在とで異なっているのは、このことが影響したのだろうか。
(続く)
(2002.05.29 記)